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川島養蜂場の一年川島養蜂場の仕事を1年を通してご紹介します。

川島養蜂場の仕事

アピの川島養蜂場は、ハチミツを採るための一般的な養蜂場ではありません。
ここで育ったミツバチたちは、そのほとんどが施設園芸農家さんの作物受粉を目的として出荷されていきます。
このように、花粉媒介昆虫を使って作物の交配を行うことをポリネーションといいます。

川島養蜂場ではこのポリネーション用のミツバチの飼育育成をしたり、全国の養蜂家さんからミツバチを集め、花粉交配を必要とする作物を作っている日本中の農家さんに向けてミツバチをお届けしたりする仕事を主に行っています。
ミツバチを使って交配させている作物は、主に果物ではイチゴ、スイカ、メロン、サクランボ、マンゴー、リンゴ、ナシ等。野菜ではナス、キュウリ、ピーマン、シシトウ、ゴーヤ、カボチャ等様々です。また、実を食べるものでなくても作物の種を販売されている種屋さんが、品質の良い種を採るためにもミツバチを使っています。

それでは、川島養蜂場の一年をご紹介いたします。

秋 9月〜11月

ポリネーション業界の一年は秋から始まるといえます。
なぜ秋から始まるのかというと、ポリネーション作物の代表、イチゴ用のミツバチの出荷が始まるからです。早い産地では9月から始まり10月中旬をピークに年末までに全国のイチゴ農家さんにミツバチを発送します。クリスマスケーキ用のイチゴはミツバチたちのおかげもあって、クリスマスシーズンに食べることが出来るのです。
また、ポリネーション業界の一年が秋から始まるといえるもう一つの理由が、夏の間ミツバチと共に花を求めて北海道や東北地方などへ移動(これを天地養蜂といいます)してきた養蜂家さんたちが地元にかえる時期だからです。転地先で増やしたミツバチたちは、帰路途中の岐阜の川島養蜂場に降ろされていきます。この転地先からのミツバチたちで秋のイチゴ交配用出荷のほとんどをまかないます。

冬 12月〜2月

寒さの厳しい冬は、ミツバチたちはほとんど活動しません。巣箱の中で寄り添いじっとしています。しかし、川島養蜂場が暇になることはありません。ビニールハウスを使用する施設園芸では季節に関係なく様々な作物をつくっています。よって、交配用ミツバチの出番も盛んになります。出荷用の小箱にミツバチの群れを入れ替える際、雪の中での作業になることもあるので寒さでミツバチたちを痛めないように、冬場は一段と慎重な作業になります。
また、出荷を待つミツバチたちの目減りを防ぐために、巣箱の入り口を小さくし冷たい外気が入らないようにしたり、箱の中の巣に新聞紙や布を巻いたりと寒さ対策をします。エサ切れをして餓死をしないようにエサ巣の減り具合にも気をつかいます。

春 3月〜5月

3月は一年で一番出荷が多く、大変忙しい時期です。メロン・スイカの交配がピークを迎え、イチゴ用のミツバチの交換、ナスの交配も続きます。
4月になるとサクランボの交配が始まります。あの甘くてかわいい実もミツバチたちが頑張ったおかげなのです。5月のゴールデンウィーク前後には、川島養蜂場のアカシアが満開になり、あたり一面甘い匂いに包まれます。
また、春は他の動物たちと同様にミツバチたちの世界も繁殖の時期となります。その為、巣箱の中は働きバチでいっぱいになり、手狭になってくるのです。
分蜂(巣別れ)するため、新しい女王バチの王台(女王バチになるための幼虫の部屋)が出来始め、交尾のための雄バチも増えてきます。この状態でそのままにしておくと、群れの半分はどこかに飛んで逃げてしまうので、新しい女王バチが産まれてくる前に巣箱を大きくしたり、複数の巣箱の群れを小分けしたりするなどして分蜂を未然に防ぎます。
そしてまた、春は養蜂家さんたちもハチミツ採りの最盛期で大忙しです。
サクラから始まり、レンゲ、ミカン、トチ、アカシアと花の時期・場所を移動しながら最終目的地、北海道へのぼる準備が始まるのです。

夏 6月〜8月

6月になると、出荷先のほとんどが東北や北海道などの涼しい地方向けになります。
出荷数は除々に落ち着き、8月の川島養蜂場は一年の中で一番落ち着いています。
しかし、夏はポリネーション以外にもたくさんあります。秋の出荷に向けてミツバチの群れを大量に増やさなければなりません。
1つの群れを2〜3つに分け、新しい女王バチのいる群れを作っていきます。
6月のモチの花が終わると、川島養蜂場近辺の花の流蜜が一旦止まります。そうなると、大量に増やしたミツバチの群れのエサが足りなくなり、群れ同士で巣箱にたまっている蜜の取り合い(盗蜂)になります。盗蜂になると蜜だけでなくお互いの群れで殺し合いをしてしまうので、そうならないためにも人為的に砂糖水や糖液を大量に与えます。
お盆を過ぎると、ミツバチの最大の敵、スズメバチの来襲が始まります。中でもオオスズメバチの群れに狙われたミツバチの群れはものの数時間で全滅させられます。スズメバチの防除にも気が抜けません。
こうして、夏の間に手塩にかけて育てたミツバチたちが、秋のイチゴのシーズンには全国の施設園芸農家さんに向けて送り届けられるのです。